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生きてると「◯◯ってことか!」の連続。

スロバキアと絵本と日本

芸術といえば、隣りのオーストリアチェコを連想しがちだった。でもここスロバキアにも芸術の歴史はもちろん存在していて、スロバキアの生んだ芸術を目指して遠い異国の地からこの国を目がけてやって来るという人々もいるのだ。

 

私はスロバキアチェコに在住している日本人の作家の方の展示に連れて行っていただき、スロバキアの絵本や日本との違いについて少しお話を聞かせてもらった。

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絵本やポストカード、原画なども置いていた。 

 

 

社会主義時代の長かったスロバキア(当時はチェコスロバキア)では様々な自由が制限され、芸術もまたその対象であった。しかし教育には熱心な政府の指針もあり、絵本という子供に向けた出版物は衰えることはなかった。

芸術家たちは自分の感性を絵本に込めて、世の中に発信し続けた。チェコスロバキアが絵本や版画の大国だと言われるのにはそんな背景もあるのだろう。

 

日本とスロバキアでは絵本一つとってもその起源には大きな差がある。日本では、平安時代などに創られた絵巻物のように、大人向けの娯楽としての要素が大きかった。一方スロバキアにおいてのその起源は、百科事典や博物書、教科書としての教育に根付いた書物であった。

チェコスロバキアから生まれる絵本がとても緻密に描かれていると感じるのは、そういった科学との結びつきが根底にはあるのかもしれない。

 

絵本や版画以外にもオペラやバレイ、オーケストラはスロバキアでも盛んで、しかもウィーンよりも安く鑑賞ができる。そんなところもスロバキアの魅力であると言いながら、まだ全然触れていないので、早めに足を運ぼうと思っている。(オペラは6月まで)

 

チェコで見学させていただいたギャラリーの近くに、独創的な星型の教会(ゼレナー・ホラの聖ヤン・ネポムツキー巡礼教会)があった。大きな池の近くの階段の上、とても見晴らしの良いところにこの教会はある。聖堂の天井には、王妃の告解の秘密を守り通したというヤン・ネポムツキーの舌が、聖遺物として描かれているのだと、スロバキア在住の作家さんが教えてくれた。

 

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上空から見ないと星型はわからない。 

 

 

強い日差しと穏やかな風に包まれたチェコの田舎風景と教会、またギャラリーに飾られた一つ一つの作品のことを思いながら、それらに込められた作家の思いや時代背景を知ることが、私たちを新たな道へと連れ出してくれるんだなあと感じた。

 

スロバキアの芸術に魅了されて、この地にたどり着いた人々は、今もこれからも作品を作り続ける。その根底にある純粋な熱意が、何百年経っても変わらずに私たちに喜びや感動を与え続けてくれる。