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生きてると「◯◯ってことか!」の連続。

芸術鑑賞の12月

12月は、ヨーロッパでしかできない経験をしよう!と思った。

年が明けたら、スロバキアを出てモロッコに行って帰国しようと決めたので、もう時間がなかった。

 

ウィーンに、クラシックのコンサートを見に行って、クリスマスマーケットにも足を運んだ。クラシックのコンサートには、オペラとバレエまで組み込まれていた。本格的なものは手が出せないほど高額なチケットとドレスコードが必須であるが、そこまで大掛かりなものでなくても、十分本格的だと感じた。大きな劇場でなくても、建物自体がクラシックで、雰囲気も良い。ウィーンで暮らす人々は、とても身近にこんな体験ができるのだ。と思うとうらやましい。クリスマスマーケットも、スロバキアのものとは規模が全然違った。観光客でごった返していて、東京ディズニーランドに来たような感覚。

 

もうひとつ、ブラチスラヴァで、くるみ割り人形を見に行った。ドナウ川の近くにあるスロバキア国立劇場で行われる公演だった。普段外観しか見ていなかったので、一歩中に入るとこんなに美しい世界が広がっていることを知らず、びっくりした。

 

バレエも演奏も、自分が思っていたものをはるかに越えていた。もっと幼い頃に、この感動に出会っていたら、今頃何か違っていたのでは…と思ってしまったが、結局チャイコフスキーのアルバムをダウンロードして何回も聴くくらいしか、私の日常に変化は起こらない。人生には遅いも早いも関係ないのである。

 

自分の凡才さはさておき、チェコでジャズのライブを観たときとも似たような感覚があった。クラシックにしてもバレエにしても、そこまで作り込まれている感じを受けない。少しミスがあったりするのが、楽しそうに自然に見えて逆に和ませてくれる。始まったときには鳥肌が立って、おわるときには涙がほろと流れるような癒やしと刺激の体験だった。

 

12月には毎年くるみ割り人形を観たいなと思う。序曲を聴くだけで、極寒の雨の夜にひとり足を運んだ国立劇場と、バレリーナと演奏者たちの楽しげな顔が蘇る。音楽はどれだけ時を経ても、その記憶を呼び起こしてくれるもので、時間もお金も惜しまずにこういった体験をするべきなのだ、と改めて気がついた。